大腸がんの薬物療法について

大腸がんが再発したら 治療の今、そして未来

大腸がんが再発した。どのような治療をするのでしょう。手術では取り除くことができない。その時、使用される薬剤の機能は?効果は?副作用は?具体的には、どのように行われるのでしょう。これらについて、わかりやすく説明します。今後、大腸がんの薬物療法はどうなるのでしょう。最新の「がんゲノム診断」の動向も含めてお話しします。

講演者

柴田浩行(しばた ひろゆき)先生

秋田大学医学部附属病院 腫瘍内科 診療科長 教授
1987年に腫瘍内科医になると東北大学・臨床癌化学療法分野の門を叩いた。当時、抗がん剤は毒性ばかりが強く、患者さんは苦しみ、亡くなっていった。大学院を修了した1991年には癌の本態を明らかにするのが先だと癌研究所で基礎研究に従事した。大腸癌を抑制するAPC遺伝子を壊すと1ヶ月で大腸ポリープが出来た。「癌出来つ 意気昂然と 二歩三歩」。偉大な先人、山極勝三郎の心境を体験した。癌の設計図が遺伝子レベルで明らかになり、癌を作ることや治す可能性さえも見えてきた。1996年には臨床に戻り、2009年、秋田大学に腫瘍内科の看板を掲げた。現在は研究から診療までを仕切る、さながら庭先の掃除から握りまでを行う小店の寿司店主である。天ぷらの名人はその極意を「衣付けて油に放り込めばおしまい」と言う。しかし、高みを求める姿勢は驚くべき味を生み出す。学問的な発見も組織の大小によらず、研究者の熱意や創意工夫によると気づかされ、精進する毎日である。